以下、蛇足ですが…
それにしても、三百数十年前に北ドイツを本拠とした作曲家によって書かれた音楽にこうも簡単に魅了されるというのは、考えてみれば不思議なことだ。
クラウディオ・カヴィーナを中心とした音楽家達が、曲を尊重しながら、いかに現代の音楽として提示したかということだろう。
最後に聴いたアンヌ・ケフェレックのピアノについて触れないのは、やはり失礼だった。(オールバッハプロ、ブゾーニ、コーエンによる編曲物含む)
情緒豊かで清潔な音楽が一貫して流れた。全プログラムを続けて演奏するという工夫も、安直な効果を狙ったものではないことは明らかだった。瞑想的な曲の中にパルティータ第2番の全曲を組み込めば、誰もが彼女のように感銘を与えられたとは思えない。
そのパルティータ第2番の慰謝に満ちた音楽。無心に弾いているようで中身がスカスカにならない。運動性に溢れたこの曲で感銘を与え得たことが全てだったと思う。